異例の大ブーム!アナタも知っておきたい株主優待の今とこれから

ふるさと納税に並ぶ人気を誇る『株主優待』が、ここ最近、大盛り上がりを見せている。現在、株主優待制度を取り入れている会社は、なんと 1300 社を超えている。実に、3 社に 1 社という計算だ。

株の初心者から玄人まで、まさに優待ブームが巻き起こっているわけだが、中には株価のバブル崩壊になぞらえて、このブームを危険視する人たちもいる。

今、一大ブームを巻き起こしている株主優待に何が起こっているのか?そして、なぜそれが危険なのか?賢く得して生きるならぜひ知っておきたい、株主優待制度の今とこれから。

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なぜ、これほど株主優待の人気が出ているのか?

先日、ニュースで 30 代主婦の方がこんな発言をしていた。おそらく今回の件、ここに全てが集約されている。

こんなお得な制度は他にないから。今の時代、銀行の利息はスズメの涙だし、そう考えると(株主優待は)最強の節約術。

– 日本経済新聞

長野在住のこの方は、8 年前にイオンの株を 100 株だけ買ったようだ。イオンの株主優待は、イオンでの買い物を毎回 3% 引きにしてくれる優待カードがもらえる。もちろんこの方の買い物は毎日イオン一択のようだ。彼女いわく、年間の節約額は実に 5 万円ほど。たかが 5 万円かもしれないが、預貯金に比べたら絶大な効果だ。

さて、イオンの株を 8 年前に買ったということは、現在と比べて 2 倍になっている。それだけでも大きな利益になるのだが、彼女は今後もその株を売るつもりはないという。

実は、これが企業側の狙いだ。

会社としては、株を短期的に売買されるよりも、彼女のように長期保有してくれる人の方が会社の財力が安定するのでありがたい。そして、彼女と同じく我々一般人からしても、家計の助けになるのでありがたい。ここに相互利益が生まれているのだ。

ましてや日本という国は、昔からお年玉やお歳暮をはじめとした贈答文化が根付いている。贈り物という点で、株主優待も国民性にマッチしていることを考えると、ブームになったのはごく自然に思える。

株主優待制度を取り入れる会社がこれだけ増え、彼女のような個人投資家を巻き込んで一大ブームを巻き起こしているのには、こういった背景がある。

株主優待制度の落とし穴

株主優待といっても、先ほどの話のように毎度毎度うまくいくわけではない。みなさんご存知のマクドナルドがとても良い例だ。

マクドナルドの株主優待では、食事券がもらえる。おかげで、先ほどの彼女のように、株主優待目的で長期保有する人がたくさん出てきて、その結果株価が下がりにくくなった。マクドナルドは狙い通りに成功したのだ。

しかし、ここで大きな問題に気づく。株価が下がりにくいのは良いのだが、その株価がとても高い所で止まっており、新たな買い手がなかなか出てこなくなったのだ。買収してもらうことも考えたようだが「実力とかけ離れている今の株価では、とても買えない。」と買い手たちに口を揃えられてしまった。

つまりこうだ。株主優待制度をやりすぎた結果、本来のチカラ以上に株価がつり上がってしまい、誰も手がつけられない(というか手をつけたくない)浮いた存在になってしまったのだ。

株というのは本来「頑張って欲しい!期待している!」と心から思う会社を支援するためにあるものだ。この心理で株を買われた会社は正当な値がつく。しかし、マクドナルドのように、応援や期待ではなく、株主優待が目的で大量の株を買われてしまうと、ずいぶん不釣り合いな値がついてしまう。

まだイメージが湧きにくい人のために補足すると、例えば、もしスターバックスの通常のコーヒーが 1 杯 2000 円で売られていたら、あなたはどう思うだろうか?(筆者も含め)スターバックスが好きな人は多いが、不釣り合いな値段がついてしまうと嫌悪感が生まれ買われなくなってしまうだろう。マクドナルドの株価もこれと同じ状態ということだ。

株主優待ブームの先にあるもの

そもそもブームうんぬんの前に、これだけ株主優待制度が充実していること自体、世界から見れば異様な光景だろう。日本は株主優待数が世界でトップレベルだ。他の国はというと、例えばイギリスは 30 社ちょっとしかなく、アメリカなんて一桁台だ。もはや無いに等しい。それもそのはず、欧米諸国の投資は機関に運用をしてもらう投資信託がメインだ。日本のように個人が株を持つなんてことは少ないので、あまり流行らない。(そもそも、市場がバカデカイので必要ないのかもしれない。)

ということで、行き過ぎた株主優待制度による市場への影響は、世界を見てもなかなか例がない。そんな中、断固として株主優待制度に反対する者たちがいる。

法人投資家(機関投資家)だ。

株主優待制度というのは、もともと個人向けに設定されているので、どれだけ株数を保有していようが優待内容は変わらないことが多い。なので、法人(機関)である彼らにとっては、一個人レベルの品をもらったところで何の得にもならない。

さらに彼らを困らせるのは、配当の軽視だ。かつては株の利益の一角を担う『配当金』も、今ではずいぶん注目されなくなってしまった。株主優待ばかり熱を帯びて、肝心の配当がされないことさえある。

こんな状況を見て、株主優待ブームの火付け役となったカゴメすら、こんな警告をしている。

個人を金券で呼び寄せるなど、最近は(株主優待制度が)容易に使われすぎだ。行き過ぎた優待ブームは市場のゆがみを生み、それはいずれ企業自体にも跳ね返るだろう。

–  カゴメ

マクドナルドに起きたような誤算が、その他多くの企業に起きてしまうことも否めない。そうなると、過大評価された会社が増えてしまい、純粋な投資家が寄り付かなくなり、会社の成長は止まってしまうだろう。その結果、各会社は株主に優待を贈る余裕もなくなり、株主優待制度はさま変わりするだろう。まるでバブル崩壊だ。

そうならないためにも、我々個人は、株主優待という魅力だけに右往左往するのではなく、その企業を本当に応援したいのか?本当に期待してるのか?という気持ちを確かめる必要があるだろう。そして企業側は、純粋にそう思ってもらえるような努力をしていかなければいけないだろう。

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